松ケン主将の適応策ブログ#5 【適応策としてのみどり】
【適応策としてのみどり】
道には街路樹が植えられています。みどりからは「憩い」や「潤い」を受けますし、みどりがある方が景観も心地よく思えます。
街路樹は道ができたときからあった、と言っても過言ではないのです。なぜ道に木が植えられるようになったのかは、もはやわからないようですが。
日本では遣唐使の僧が人々が行き交う道に木を植えれば、休息や避暑になり、果樹なら飢えをしのぐこともできると提案したという話がよく知られています。
木のない道を想像してみると相当に味気ないでしょう。そんな道とともにある街路樹、実は温暖化適応策としても非常に有効と言えるのです。
それは1500年以上前にコメントされていたように木陰がとても優秀なクールスポットだからです。
このブログの第3回でご紹介した環境省の調査(※1)では、気温は変わらないものの地面の温度は日向と木陰では20℃近く違うことが示されています。
それよりもう少し古い2005年の同省の調査報告書(※2)には、テント下と木陰の放射温度を比べたデータがあります。
そこでは、テントはそれじたいの表面温度が高く放射熱で体感温度が上がりますが、樹冠は気温と同程度なのでそれだけ涼しさを感じられると報告されています。
それでは木陰の放射温度はなぜ低いのか?それは木が生きているから、なのです。
われわれが暑いと汗をかくように、木は暑いと根から吸い上げた水分を水蒸気として放出します。この気化熱で木は自らを冷やし「体温」を気温と同程度に保つのです。
これがミストなどの効果と同様の「蒸散」と呼ばれるものですが、人工的なミストに比べ樹木の蒸散効果ははるかに大きいと言えます。
また、木陰は100%の影ではなく、隙間があります。一枚一枚の小さな木の葉がたくさん重なってスカスカ構造になっていますね。
この構造のためにテント布のように隙間を作らないものに比べて大気と接している面積がより大きくなります。それだけ暖まりにくいのです。
これが木陰の放射温度が低いもう一つの理由。「フラクタル日よけ」はこの構造を真似て人工的な木陰を作り、涼しさを生むものです。(※3)
昨今、枝をバッサリと落とされた街路樹を見かけます。落葉や鳥の巣による糞害など管理の上では致し方ないと思えることも多いです。
しかし、景観はかなり「悲しい」感じになりますし、適応策としてはマイナスなのです。いい知恵がないものでしょうか。
※1)2013年7月19日 環境省報道発表
https://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16924
※2)平成17年度都市緑地を活用した地域の熱環境改善構想の検討調査報告書 P5
https://www.env.go.jp/air/report/h18-03/01.pdf
※3)京都大学人間環境学研究科 フラクタル日除けについて