気候変動コラム「蛇足の靴」
#3 新春に願う
能登半島地震で始まった2024年は内外共に激動の1年でした。戦争は一向に出口が見えないなか、地球規模の環境問題はますます深刻化し、我が国も観測史上最も暑い夏に見舞われました。
2025年の新春は、元旦からの災害こそなかったものの、宮崎では比較的大きな地震が発生し、日本海側では大雪の被害が発生しました。地球温暖化はこの大雪にも少なからず影響しているとも言われています。
パリ協定に基づきカーボンニュートラルを目標に掲げる国・地域の数は、2021年11月時点で154カ国・1地域に上るそうです。しかし、世界全体の温室効果ガス排出量は一向に減少しない状況に今、直面しています。さらに米国の新政権の発足がこうした事態に拍車をかけるのではないかと懸念されます。
昨年12月に気になるアンケート結果が発表されました。電通総研と同志社大学が実施した「第8回世界価値観調査 日本版」(調査時期:2024年7~8月、対象:全国の18~79歳の男女1,272人)です。この調査は、現在およそ120ヵ国・地域の研究機関が参加している国際的な調査だそうで、今回、日本での調査・分析が諸外国・地域に先行して完了したため、公表されたものです。
このなかに、環境保護と経済成長についての設問があります。結果は、「環境がある程度悪化しても、経済成長と雇用の創出が最優先されるべき」と回答した人は31.8%となり、2019年に比べて8.7ポイント増加し、1995年の本設問の開始以来、過去最高の割合です。一方、「その他・わからない」「無回答」の計が36.8%で過去最低となりました。「環境か、経済か。」建前で言えば、1967年制定の公害対策基本法にあった「経済調和条項」は1970年の改正において削除されました。それでも市民の本音は、その時々の社会情勢に左右されてきました。経済優先が環境優先を上回るという今回の結果も昨今の経済情勢下での市民意識を反映したものなのでしょう。
今回の調査では初めて気候変動に関する問いも設定されました。その結果、気候変動を重要な問題と捉える人は90%を超えています。つまり、市民は気候変動に不安を感じ、その対策は重要であると認識しつつも、経済や雇用を優先せざるを得ないと感じる人が多いというのが現状なのです。「環境か、経済か。」ではなく、「環境も、経済も。」という取組みが今まさに求められています。
今年は巳年です。本年こそ従来の経済社会から脱皮し、カーボンニュートラル経済、ネイチャーポジティブ経済、そして循環経済(サーキュラーエコノミー)が大きく前進する年になってほしいものです。それが新春ならではポジティブな願いです。
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【筆者プロフィール】
星野 弘志 氏 (NPO法人環境ネットワーク埼玉 代表理事)
元埼玉県環境部長。現在はNPO法人環境ネットワーク埼玉(埼玉県地球温暖化防止活動推進センター)の代表理事、埼玉県環境科学国際センター客員研究員を務めるほか、埼玉グリーン購入ネットワーク会長、埼玉環境カウンセラー協会副会長などとして幅広く環境啓発活動などに取り組む。
◎星野氏経歴の詳細はこちら: (環境カウンセラーのサイトに移動します)
https://edu.env.go.jp/counsel/counselor/2012111001
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