Logo

気候変動コラム「蛇足の靴」#5「気候変動とスポーツ」

 

 桜の開花と共に春の到来を感じさせるものに、プロ野球の開幕や甲子園での選抜高校野球があります。加えて今年は桜より一足先にMLBの開幕戦が東京ドームで開催され、大谷フィーバーで一気に気温も上昇したかのようでした。改めてスポーツの影響力の大きさを感じます。

 我が国のスポーツ人口は約7,800万人とも言われ、ウォーキングなども含め多くの人々がスポーツに親しんでいます。さらにテレビ観戦なども含めれば、乳幼児を除き、ほぼ全ての人がスポーツを楽しんでいるといっても過言ではないでしょう。

 

 

 何故、これだけスポーツが愛されるのでしょう。それはスポーツには様々な効能や力があるからではないでしょうか。体を育む「体育」はもとより、戦術眼や判断力を育む「知育」、メンタル力や感情コントロール力を育む「心育」にも有用です。そして、何と言っても人々に感動や元気を与えてくれる一級品の娯楽であり、ビジネスとしても注目されています。さらに、地域文化を育み、社会の繋ぎ役となり、子供はもとより大人にも大きな夢を与えてくれる存在です。

 そのスポーツに今、気候変動の影響が大きな影を落としつつあります。ゲリラ豪雨や落雷でスポーツの試合が中止になる、雪の降り方や雪質が変わってスキー大会などに支障が出るといったことが深刻化しています。なかでも問題なのは、子供たちのスポーツ環境が奪われつつあることです。2024年は熱中症救急搬送数が過去最高となったことは別のコラムでご紹介しました。年々、厳しさを増す暑熱環境下で熱中症を予防するため、日本スポーツ協会は熱中症予防運動指針を制定しており、多くの学校やスポーツクラブで運用されているようです。この指針では、暑さ指数(WBGT)を基に運動の可否などを定めており、暑さ指数が31以上(参考:気温35℃以上)となると、「原則運動は禁止」です。ちなみに、2024年の7月~9月には、場所によっても異なりますが県内で約60日程度が日最高暑さ指数31以上となったとのことです。このうち、暑さ指数の予測値が33以上を目安に発令される熱中症警戒アラートは、埼玉県では23回もありました。こうした事態により子供たちなどの運動機会が大きく損なわれており、心身への影響が懸念され始めています。

 こうした事態を受け、本年2月17日に「SAITAMAスポーツ×脱炭素アクションミーティング」が開催され、埼玉西武ライオンズや浦和レッズなど各スポーツ界のトップチーム16団体が集結しました。スポーツビジネスは、気候変動から大きな影響を受ける一方で、スポーツ施設の運営や選手・観客の移動などにより、少なからずCO2を排出し、温暖化の原因にもなっています。こうした状況も理解した上で、トップチーム自らがCO2削減などの温暖化対策に率先して取り組むとともに、観客など県民への普及啓発活動にも努めていくことを大野知事の前で表明しました。大きな可能性を秘めた多くの子供たちのためにも、「スポーツが安心してできる環境」を守っていこうというスポーツ界の取組に期待が膨らみます。

 


筆者プロフィール

星野 弘志 氏 (NPO法人環境ネットワーク埼玉 代表理事)

元埼玉県環境部長。現在はNPO法人環境ネットワーク埼玉(埼玉県地球温暖化防止活動推進センター)の代表理事、埼玉県環境科学国際センター客員研究員を務めるほか、埼玉グリーン購入ネットワーク会長、埼玉環境カウンセラー協会副会長などとして幅広く環境啓発活動などに取り組む。

◎星野氏経歴の詳細はこちら: (環境カウンセラーのサイトに移動します) 

https://edu.env.go.jp/counsel/counselor/2012111001


◎こちらもチェックしてみてください ↓↓↓

埼玉県環境科学国際センターHP: https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/index.html

公式Facebookhttps://www.facebook.com/saitama.kankyokagaku

公式インスタグラムhttps://www.instagram.com/cess.saitamaken/?hl=ja

公式Youtube: https://www.youtube.com/channel/UCloUEno4mbrzZlOT2SzEV7A