#7「Saitama日傘」
年齢が知れてしまいますが、昔、「傘がない」という井上陽水の曲がありました。傘がなくても「君に会いに行かなくちゃ」と歌い上げ、雨の日に傘がなくても会いに行くという強い想いを表現した唄です。雨の日に傘をさすのは当たり前です。傘をささなければ、体や衣服が濡れてしまうという被害が明白だからでしょう。
では、日傘はどうでしょうか。強い日差しの日に、ご婦人が日傘をさすのは昔から見慣れた風情のある光景です。しかし、強い日差しは男女を問わず同様に降り注いでいるのに、男性は、なぜ日傘をほとんどささないのでしょうか。それは日傘をささないことによる被害が雨のようには明白でなく、意識する人には防ぐべき被害と映るものの、意識しなければ、実際は影響を及ぼしていても被害とは感じないからではないでしょうか。従来、ご婦人は紫外線や日焼けを避けるために日傘をさしているようです。男性は、そんなことは気にしない人が多いことは言うまでもありません。
ところが最近は少し状況が変わって来ました。猛暑などの増加に伴う熱中症リスクの増大は、男女を問わず、気に掛けずにはいられないものとなっています。そんななか、熱中症被害の防衛策の一つとして、日傘の利用が注目されています。

気象情報会社ウェザーニュースが2022年5月に行った日傘の所有についてのアンケート調査では、図のように女性の所有率が78%であるのに対して、男性は10%と圧倒的に低い結果でした。しかし、この男性の10人に1人は日傘を持っているという割合は、こんなに増えているのかという印象かと思います。県は、8年程前から気候変動適応策として日傘の普及に取り組んでいます。特に日傘の利用が圧倒的に少ない男性にターゲットを当て、県職員により「日傘男子広め隊」を結成して普及啓発に取り組んできました。こうしたことも影響してか、最近では日差しの強い日には日傘をさしている男性をチラホラ見かけるようになりました。かくゆう私も数年前から日傘男子、いや日傘オヤジの一人になりました。まだ少し恥ずかしさはありますが、体感温度が3~7℃下がるなどの効用を実感しています。
最近、登校時に日傘をさしている小学生を見かけるようになり、少し複雑な気持ちになっています。日傘という適応策がここまで普及してきたのかと思う反面、今後さらに気温上昇が見込まれるなか、日傘がなければ学校にも行けないような過酷な現実を突きつけられたような気がするからです。私たち大人は将来世代へそんな未来を遺してはなりません。適応策の推進と共に、温室効果ガスを削減する緩和策をより一層推進し、気温上昇をなんとしても1.5℃以内に食い止める必要があります。将来、日傘がない場合には、相当に強い想いがないと外を歩けない環境になり、「日傘がない」なんて唄が生まれないためにも。


【筆者プロフィール】
星野 弘志 氏 (NPO法人環境ネットワーク埼玉 代表理事)
元埼玉県環境部長。現在はNPO法人環境ネットワーク埼玉(埼玉県地球温暖化防止活動推進センター)の代表理事、埼玉県環境科学国際センター客員研究員を務めるほか、埼玉グリーン購入ネットワーク会長、埼玉環境カウンセラー協会副会長などとして幅広く環境啓発活動などに取り組む。
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