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気候変動コラム「蛇足の靴」 #16「グリーンランド」

2026-01-23

#16「グリーンランド」

 このところ世界の注目を集めている地域の1つがグリーンランドです。その面積は約216万km2であり、世界最大の島だそうです。デンマークの自治領で、人口はわずか5万7,000人程度、国土の80~85%は氷に覆われています。

 トランプ政権がこの土地に目を付け、突然、領有に向け身勝手な動きを加速しており、大きな国際問題となっているのはご案内のとおりです。

 国の面積の順位表にグリーンランドを当てはめてみると、11位のコンゴと12位のサウジアラビアの間にランクされます。ちなみに、日本の6倍近く、デンマークの約50倍にもなります。しかし、私たちが見慣れているメルカトル図法の世界地図では、高緯度になるほど面積が大きく描かれますので、グリーンランドはもっとずっと大きいと感じていた方も多いのはないかと思います。実際、アメリアにとっては、その国土面積の2割強程度なのです。

 ところで、このグリーンランドは気候変動問題に関心の高い人々の間では、以前から注目されてきた地域です。積もった雪が圧縮されて氷の塊となり、それがゆっくりと流動しているものが氷河ですが、その中でも大陸規模の大きさを持つ南極とグリーランドの氷河は「氷床」と呼ばれます。この氷床のイメージとそれができる仕組みは下図のとおりです。氷床の厚みは、なんと2,000m近いそうです。

 グリーランドの氷床の質量は、衛星を用いた観測などで見積もられています。ある論文では、2002年から2020年まで年間2,250億トンもの氷が失われていると推計されています。琵琶湖の貯水量約275億トンの8倍以上の量であり、1年で海水面を0.7ミリ上昇させる量だそうです。ちなみに、グリーンランドの氷床がすべて消失した場合、全球の海水面が6〜7メートルほど上昇すると考えられています。

 グリーンランドの氷床の消失の影響は海水面の上昇だけはありません。大量の淡水が北大西洋に流れ込むことで塩分濃度を低下させ、大西洋を流れる大規模な海流システムであり、冷たい深層水を南へ戻し、暖かい表層水を北へ運ぶ役割を果たしている海洋大循環(AMOC)が弱まってしまいます。その結果、北欧の極端な寒冷化や異常気象を引き起こす懸念が高まっているのです。このように、グリーンランドに大量の氷床があることによって、世界の陸地も気候も守られていることを十分に認識する必要があります。

 こうした科学的なデータを無視して、北極圏の氷が減少し、北極航路の利便性が高まるにつれ重要性を増すグリーンランドの地政学的な位置づけから、その領有を狙う行為や、氷の下に眠るレアメタルなどの地下資源を狙った行為は、世界の緊張関係を高め、気候変動の影響を激化させ、自分で自分の首を絞めるようなものであることを早く悟ってほしいと願うのは無理でしょうか。 今、グリーンランドでは、気温上昇や海水温の上昇、微生物の繁殖の影響などにより氷床の融解が加速しています。さらに、氷が後退した地域では植生が増え「緑化」が進んでおり、これが二酸化炭素の28倍も温室効果の高いメタンの放出を招いているそうです。グリーンランドは、いつまでも氷の島である必要があるのです。その名のとおりの緑の島にしてはいけないのです。


筆者プロフィール】

星野 弘志氏 (NPO法人環境ネットワーク埼玉 代表理事)

元埼玉県環境部長。現在はNPO法人環境ネットワーク埼玉(埼玉県地球温暖化防止活動推進センター)の代表理事、埼玉県環境科学国際センター客員研究員を務めるほか、埼玉グリーン購入ネットワーク会長、埼玉環境カウンセラー協会副会長などとして幅広く環境啓発活動などに取り組む。

◎星野氏経歴の詳細はこちら: (環境カウンセラーのサイトに移動します) 

https://edu.env.go.jp/counsel/counselor/2012111001


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