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気候変動コラム「蛇足の靴」 #18「桜はらはら」

2026-03-25

#18「桜はらはら」

 今年も桜の季節となりました。私が子ども頃は桜と言えば、4月の入学式を彩る花。それがいつの間にか、3月に卒業生を送り出す花となりました。もちろん、今年も3月中に満開です。

 調べてみると、下図のとおり1960年代の東京の平均開花日は3月30日とあります。4月の入学式の頃は埼玉でも桜が咲き誇っていた記憶に間違いはないようです。

 しかし、開花日はだんだんと早まって行き、2010年代には3月22日となっています。2020年代に入ると、20年、21年、23年は観測史上最早の3月14日となり、今年は19日でした。こうした桜の開花日は3月の最高気温の上昇など地球温暖化やヒートアイランド現象による気温上昇の影響が大きいようです。

 開花時期の地域的な変化についても、4月1日の開花ラインの記録から見てみましょう。次図のように、1956~1985年の平均値では4月1日の開花ラインは、三浦半島から紀伊半島にかけての本州の太平洋沿岸と四国、中国地方でした。それが1991~2020年には関東地方北部から北陸西部まで北上しています。では、温暖化がさらに進むと、4月1日の開花ラインは北上していくだけなのでしょうか。

 桜は暖かいだけでは咲かないことはかなり知られるようになってきました。桜の花芽の成長には3〜10℃前後の低温による「休眠打破」が必要なのです。ということは、温暖化がさらに進行すると、「休眠打破」が十分に行われず、かえって成長が遅れ、花が咲かないといった地域が出てくるおそれがあるのです。ソメイヨシノの研究では、温暖化の進行に伴い、当初は開花が早まりますが、さらに高温化すると休眠打破の遅れが顕著となり、開花の遅延や満開に至らない年、開花しない年が生じ、最終的には開花しなくなる可能性があるというショッキングな未来が示唆されています。

 もう一つ、桜にとって深刻な問題は、クビアカツヤカミキリという外来昆虫による被害です。このカミキリ虫は、サクラ、モモ、ウメなどのバラ科樹木に寄生し、幼虫が内部を食べて枯らしてしまうのです。そうでなくても、ソメイヨシノは樹齢50〜60年を超え老木化したものが多く、幹の空洞化や菌の感染により、倒木のリスクが高まり、全国的に問題となっています。クビアカツヤカミキリは本県では2013年に草加市・八潮市で発見され、その後、利根川沿いの地域にも被害が発生し、2024年度時点で44市町村にまで広がっています。その防除は喫緊の課題です。

 森林総合研究所によれば、クビアカツヤカミキリは幼虫の期間が温暖な地域で約2年、冷涼な地域で約3年と差があり、気温上昇で成長が速まり、温暖化は増殖ペースの上昇につながるとのことです。また、気温上昇により樹木が弱体化し、樹液で幼虫を溺死させる力がなくなり、被害が増加していると考えられるという見方もあります。まだまだ未解明な点は多いものの、温暖化の進行が、様々な点から桜に悪影響を与えているようです。まさに桜受難の時代になっています。

 桜が私たちにとっていかに重要かを語る必要もないと思います。温暖化問題の解決には私たち一人ひとりの意識改革と行動変容が求められています。まるで落涙のように「はらはら」と散りゆく桜をただ眺めているだけの春にはしたくないものです。


筆者プロフィール】

星野 弘志氏 (NPO法人環境ネットワーク埼玉 代表理事)

元埼玉県環境部長。現在はNPO法人環境ネットワーク埼玉(埼玉県地球温暖化防止活動推進センター)の代表理事、埼玉県環境科学国際センター客員研究員を務めるほか、埼玉グリーン購入ネットワーク会長、埼玉環境カウンセラー協会副会長などとして幅広く環境啓発活動などに取り組む。

◎星野氏経歴の詳細はこちら: (環境カウンセラーのサイトに移動します) 

https://edu.env.go.jp/counsel/counselor/2012111001


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