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気候変動コラム「蛇足の靴」 #23 「レジャー変動 ~夏は海水浴、冬はスキーは遠い昔?~」

2026-09-08

#23 「レジャー変動 ~夏は海水浴、冬はスキーは遠い昔?~」

  

この夏、海水浴に行かれた方はどの位いるのでしょうか。かつて海水浴は夏の定番レジャーでした。しかし、レジャーの多様化が進むなか、状況は一変しているようです。

 表‐1は、日本生産性本部が公表した「レジャー白書2026の速報版」に掲載されたアンケート調査結果です。ある余暇活動を2025年1年間に1回以上行った人(回答者)の割合である参加率を見ると、海水浴は下から3番目のわずか3.8%。将来やってみたい・今後も続けたい人の割合である希望率は下から2番目の7.7%でしかありません。

 

 この調査結果について、フリーライターの小西マリア氏が交通業界のニュースサイトに記事を載せています。タイトルは、「なぜ日本人は「海水浴」へ行かなくなったのか? ピーク時9割減の根本理由とは? 崩れ始めた“遠出レジャー”の前提」です。年間に1回以上海水浴を楽しむ人は2024年時点で440万人と推計され、ピーク時の1985年の3,790万人から88%も激減。海水浴場数も最盛期の1,353か所と比べると約3割が姿を消したそうです。

 小西氏によれば、「可処分時間が限られる現代においては、移動による摩擦や快適性の落差をシビアに計算したうえで行き先が選ばれる。車を所有する層が減るなか、移動に対する価値観は、時間を極小化して近隣の商業エリアや空調の効いた屋内空間で効率よくタイパを満たす選択と、観光列車やキャンピングカーのように移動プロセスそのものをエンターテインメントとして消費する選択へと大きく二極化。負担ばかりが大きく目的地に到着するまで何の価値も生み出さない旧来型の長距離移動は、真っ先に淘汰の対象となる。」とのこと。加えて、既に多くで指摘されているように、危険な猛暑・酷暑や日焼け・熱中症への警戒も「海水浴離れ」を加速化させているようです。

 一方、冬の定番レジャーであったスキー・スノーボード(スノボ)にも同様の傾向が見られます。1990年代は1,800万人もいたスキー・スノボの国内人口は、今や400万人台まで減少。スキー場の数もピーク時の約700か所から400か所程度に減っています。ところが、こちらには少し違う状況が現れています。それはインバウンド(訪日外国人旅行客)の影響です。図‐1は、スキー・スノボの国内人口と外国人訪問者の最近の推移を表しています。

 

 スキー・スノボの国内人口が減少するなかで、スノーリゾートへの外国人訪問者は、コロナ禍以前のレベルに回復しつつあります。

 今やインバウンド全体による消費額は8兆円規模となり、日本人の国内旅行消費額25兆円の1/3程度まで増加しています。国も観光立国推進の一環として、国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業などを進めています。

 しかし、雪不足などスキー場にも気候変動の暗雲が立ち込め始めました。この暗雲が将来どうなるのか。北海道大学と森林総合研究所が行った気候変動が将来のスキー場営業に与える影響に関する研究結果を紹介します。これは全国349か所のスキー場を対象に気候変動予測データに基づき積雪シミュレーションを用いて、自然積雪のみを前提としたスキー場の営業可能性を評価したものです。1951~2011年の実態を基に、2℃上昇(2030~2091年に相当)、4℃上昇(2050~2111年に相当)の条件下での推計です。その結果、温暖化が進むにつれて、日本のスキー場の存続可能性は急速に低下することが明らかになりました。2℃上昇では、全面営業が可能なスキー場は53か所、一部営業が可能なスキー場は108か所。さらに4℃上昇では、天然雪のみで安定的に全面営業できるスキー場は全国でわずか7か所、一部営業が可能なスキー場も26か所に限られるとの予測結果です。日本のスキー場が外国人に好まれるのは、その良質な雪質にあります。雪質の変化も気になります。インバウンドで賑わう今日のスノーリゾート場の風景は、いつか古き良き時代の昔話になってしまうのでしょうか。

 社会の様々な変化に伴い、日本のレジャーも変動していきます。そうしたなかで気候変動はますます大きなインパクト・ファクターとなってきています。レジャーの変化は私たちの生活や文化に影響を与えることはもとより、観光産業など経済面にも大きな影響を及ぼします。ある地域を支えてきたレジャー産業の衰退は、その地域の経済や雇用に大きな影を落とします。気候変動の適用策は、環境分野だけの話ではないのは明らかですが、今後は、経済・社会・環境の面から総合的に取り組むことがますます必要になってきていると強く感じます。


筆者プロフィール】

星野 弘志氏 (NPO法人環境ネットワーク埼玉 代表理事)

元埼玉県環境部長。現在はNPO法人環境ネットワーク埼玉(埼玉県地球温暖化防止活動推進センター)の代表理事、埼玉県環境科学国際センター客員研究員を務めるほか、埼玉グリーン購入ネットワーク会長、埼玉環境カウンセラー協会副会長などとして幅広く環境啓発活動などに取り組む。

◎星野氏経歴の詳細はこちら: (環境カウンセラーのサイトに移動します) 

https://edu.env.go.jp/counsel/counselor/2012111001


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